「親の会による法人後見」レポート
とある親の会による法人後見のサポートを通して気づいたことをまとめます。
許可をいただいて話せる範囲で記載します。
障がい者の親なきあと問題において
親なきあとに備えて成年後見制度を利用したいと思っているけれども、
後見人や制度そのものへの不安からなかなか利用に踏み込めないという方はよくいらっしゃいます。
そこで、とある親の会においては法人を設立して
その法人で『法人後見業務』を行っていくという試みがなされました。
後見人のなり手自体が少ない中で、チームで後見業務を行える法人が増えるということは
社会にとっても非常に意義のあることだと考えます。
障がいのある子の親同士でグループホーム等の福祉事業所をつくろうとする方もいらっしゃる中、
法人後見を行う法人をつくった例はあまり聞きません。
一概に比較できるものではないのですが、法人後見は福祉事業所のように物件の費用や人件費を用意する必要がなく、コストがほとんどかかりません。
「経営」という面で見たときには、始めやすく続けやすいので、もう少し実例があっても良いように思えます。
(実例がないのは知られていないだけなのか、成年後見制度のイメージが悪いからなのか・・・)
法人後見への挑戦
もちろん親の会の皆さんにとっては
法人を設立するということ自体が初めてなのでそこからすでに難しい部分ではあります。
私が親なきあと問題の専門家であり、かつ司法書士であるということもあり
かなり遠方ではあったのですが、諸々のサポートのご依頼をいただいて
設立の段階から二人三脚で進めることになりました。
法人設立からはじまって、成年後見の申し立て、後見業務遂行の上でのご相談など
私が司法書士としてお役に立てる面が多々あり、手続き面は順調に進みました。
細かい部分で成年後見用の損害保険の手配なども、
どの会社が対応してくれるかの知識もあったのでそのあたりもお役に立てたかと思います。
大変そうだった部分は、やはり後見人の業務や責任の部分についての法律の理解についてです。
後見業務がはじまってから実務の中で覚えていくことも多いのですが、最低限のことは後見人の就任前に把握しておくべきでしょう。
書籍や家庭裁判所の提供している動画などから勉強されていたのですが、どうしてもイメージがつかない部分があり、申し立て前に後見業務をなるべく理解するためにも、業務の詳細に関するミーティングは綿密に行いました。
毎年家庭裁判所へ提出する実際の書式例を用いて、
そこから逆算した日常業務のマニュアルつくりや
これまで私が対応に困った後見業務の事例なども共有しつつ理解を深めていきました。
条文に触れながらも説明していったのですが、やはり法律専門職でない方にとっては条文は未知の言語。
皆さん慣れていくのに時間がかかったところでした。
そんな努力の甲斐があってか、家庭裁判所で本件法人を候補者として申し立てた件について、本件法人が無事に後見人になれることに。
家庭裁判所が候補者通りに後見人を選任するかどうかはわからないので、審判がおりるまではドキドキでした。
最初の一件について後見人に就任できると一安心のところです。
その中で後見業務を間違いなく行えれば、家庭裁判所も今後安心して任せてくれるところでしょう。
ちなみに最初の後見人は地域の高齢者の方でした。
親の会のお子さんたちは年齢と現在の生活の中でまだ成年後見の必要がないので、
その子たちに後見人が必要になる時までに、法人として経営上も含めて安定した後見業務を行えるように成長していきたいところです。
親の会による法人後見の課題
親の会による法人後見の最大の壁は、世代交代のタイミングでしょう。
まさに親なきあとのタイミングに備えて、法人の役員・従業員の新陳代謝は長い目で見たときに必ず必要になってきます。
札幌に比べると人口の少ない地域なので、
今後長い目で見たときに若い世代の法人の加入者が
増えてくるかどうかが心配なところです。
ただ、働き口を探されている方も間違いなくいるので、法人としての経営が安定してきて雇用を生めるようにすることで、
解決の選択肢が広がるのではないかとも考えます。
これからの法人後見
後見業務の性質上、1つの法人のなかで受けられる人数には限界があります。
法人の中で働く方が多い場合は、個人の後見人に比べて対応できる人数が多いはずですが、利益相反の関係や対応できる現実的な距離感を考えると、対応が難しいケースも出てくるでしょう。
つまり法人後見を行う法人は各地域に複数あっても全く問題ありません。
本件の親の会の皆さんの想いとして、今後同じように法人後見を行う親御さんたちの参考になれるようにと、
こういった投稿をすることにご賛同いただきました。
これから法人後見を始める方々のお役に立つことを願います。
札幌でも関わっている医療職による法人後見にもかなりの反響があり、社会的にも法人後見の需要が高まってきていることを実感します。
今後も社会に求められる成年後見人の新しいあり方を追求していきたいところです。
さらなる詳細に興味がある方は個別にご相談ください。長くなりましたがここまで読んでくださってありがとうございます。
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