先日、相談支援事業所である相談室あいりす様と、親なきあと問題についての勉強会を行いました。
その内容を相談室あいりす様にて発刊されている「あいりす通信」にてまとめてくださっていて
そちらの内容を当相談室のホームページにて引用して投稿させていただきます。
相談室あいりす様、誠にありがとうございます。
あいりす通信
楽しみにしていた夏も、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、行動の制限を余儀なくされてしまった方も、多いのではないでしょうか? みなさん、コロナ禍での楽しみ方をいかに見出しているのでしょうか? これからの秋、冬と、楽しいイベントが実現できるよう、ただただ祈るばかりです。
さて、今回の通信は、他の事業所の紹介でもできればと考えていましたが、こちらも新型コロナウィルスの影響から、お伝えすることが難しくなってしまいました。また時機を見てご紹介できればと考えています。
しかしながら、ただ手をこまねいてこの状況を見過ごしてもいられません。「あいりす」でも、より良い情報を提供できないかと考え、この度、勉強会を開催しました。「障がい者の親なきあと問題相談室 ファミリア」の渡邉護さんを招き、お話を伺い、意見を交換しました。
勉強会
「あいりす」ではこれまで「親なき後の生活についての聞き取り調査」を行ってきました。そして訪問の際にお伺いした様々なお話からも、成年後見制度の利用に躊躇されているが多い、という印象を受けました。もちろん慎重に検討した上で、必要性を判断する必要はあります。しかしながらこの制度の正確な理解が難しいのではないか、という側面もあるように感じています。
そこで、今回、みなさんにこれまで伺ってきた話を整理した上で、「あいりす」の相談員もしっかりと知識を得て、みなさんのお役に立てる情報を提供していきたいという思いから、「障がい者の親なきあと問題相談室 ファミリア」の渡邉護さんにお話を伺うことにしました。
以下、その一部をご紹介したいと思います。
「親亡き後問題」としてまずあがってくるのが、成年後見制度の利用に関してです。しかし成年後見制度を利用したいという方が少ないのが現実です。なぜなのでしょうか? 今まで皆さんのお話をお聞きするなかで、主なものを拾い上げてみました。
①親亡き後について不安はあるが、その不安が漠然としたもので具体的にイメージができない。
②専門職後見人に対しては、不信感がある。親亡き後の世話や管理に関しては兄弟姉妹に任せればいいのではないか。
③親が元気なうちに後見人を選任すると、子どもとの間の金銭のやり取り等で不便となることがあり使い勝手が悪いのではないか。
④不安の内容としては、将来の住まいが不安であり、札親会のグループホームや施設入所が決まれば、事業所で金銭の管理やその他のことをしてもらえばいいのではないか。
⑤将来は生活保護を受給することが予想され、後見人の利用の必要性が分からない。
⑥遺産の相続などで、財産が少ない(ほとんどない)から、後見制度の利用の必要性を感じない。
⑦後見人の報酬の仕組みや根拠が分からず、利用を躊躇してしまう。
このような声が多く聞かれました。みなさんが躊躇してしまうのも、このあたりに理由があるのではないでしょうか? このことから、話し合いの場で、意見の交換を行いました。
あいりす相談員「①の親亡き後について不安はあるが、その不安が漠然としたもので具体的にイメージができないについては、いかがですか?」
司法書士渡邉「そうですね。これに関しては、丁寧に説明していくしかないですね。相談される方の個別の事情もあると思いますから、詳しくお話をお聞きして慎重に対応していきたいと思います。」
あいりす相談員「そうですね。成年後見制度がどのようなものかをしっかりと理解した上で、必要か否かを慎重に判断する必要がありますね。②の専門職後見人に対しては、不信感がある。親亡き後の世話や管理に関しては兄弟姉妹に任せればいいのではないかについてはいかがですか?」
司法書士渡邉「成年後見人の業務は思いのほか大変なものです。近くに住んでいればいいのでしょうが、遠隔地にいると、本人のいる所や家庭裁判所へ来てしなければならない用事もあり、その後の人生に制限がかかってくると思われます。また年齢を重ねるにしたがって、ご自身の備えも必要になってきますので、相応に負担がかかってくると思います。」
あいりす相談員「なるほど。ご兄弟にはご兄弟のご家族や人生もありますし、介護や相続の準備など将来のことを考えると、負担になってしまうこともあるのですね。」
あいりす相談員「次は、③の親が元気なうちに後見人を選任すると、子どもとの間の金銭のやり取り等で不便となることがあり使い勝手が悪いのではないかですが。」
司法書士渡邉「そうですね。これについては、子どもの財産は成年後見人が管理することになりますので、後見人を通さなければならないことが増えて、今まで通りにはいかなくなってしまうでしょう。それまで、ここまでならいいかな、と思って使っていたような場合には、不便に感じることはあるでしょう。しかしながら、子どもの財産は、親の財産とは別の子ども自身の財産だということも留意する必要がありますね。」
あいりす相談員「なるほど、親だからといって、子どもの財産を自由に使ってしまうことは難しいのですね。④の不安の内容としては、将来の住まいが不安であり、札親会のグループホームや施設入所が決まれば、事業所で金銭の管理やその他のことをしてもらえばいいのではないかはいかがでしょうか。」
司法書士渡邉「グループホームや施設で金銭管理を行ってもらえるのであれば、基本的には必要なさそうですね。しかし、介護保険制度への移行や相続があった時、大きな財産を所有しているような場合には、成年後見人は必要ではないでしょうか。」
というような形で、話を進めていきました。成年後見制度の利用は、一般的な話をすることはできるものの、個別の事情によって、大きく異なることも多いため、慎重に検討する必要があるとのことです。
しかし、何もせず手をこまねいていても仕方ないのではないかと考え、他の方法についても伺いました。
司法書士渡邉「最初の一歩として、遺言書を書くこともいいかもしれませんね。成年後見人の選任せざるを得ない状況を避けられる場合もあります。」
あいりす相談員「相続の場面では、次のように場面が転換していきますが、遺産分割協議には、判断能力が不十分な人(意思無能力者)には、後見人が代理する必要があります(そうしなければ遺産分割協議は無効になってしまいます)。
①相続人の確定(戸籍謄本等と取って調べます)
②相続財産の調査(金融機関への問い合わせ、不動産の調査、借金の調査等)
③遺産分割協議(誰がどの財産をどの程度相続するのかを話し合います)
④相続手続き(遺産分割協議書に基づいた銀行や不動産の手続等)
このように、相続は大変なものです。」
あいりす相談員「遺言書を書くことで、誰にどの財産をどの程度相続させるか決めて、遺言執行者を選任しておけば、すべての手続をしてもらえます。そうすることで、成年後見人の選任を避けられる場合があります。」
あいりす相談員「渡邉護さん、ありがとうございました。大変勉強になりました。またよろしくお願いします。」
紙面の都合からも、お話しいただいた内容を一部割愛させていただいております。
相談員からは、法律や実務に関して疑問に思っていたことを率直に質問し、渡邉さんからは丁寧にお答えいただきました。途中、話が脱線しつつも時間いっぱい話し合いを行いました。それでも時間は足りず、今後もこのような勉強会の機会を設けていくことを確認しました。
今後は、みなさんの疑問や意見を反映させたものにすることによって、より有益な情報を提供したいと考えています。忌憚ないご意見やご要望をお聞かせください。
また「あいりす通信」も、これを機に、既定の路線の通信とは別に、成年後見制度やその周辺の分野に特化した通信を発行すべきではないか、との意見も出ており、今後に向けて検討を行っています。よりホットな話題を提供できるよう努めていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
以上、あいりす通信様からの引用でした。
相談支援事業所の相談員の方や、直接支援に関わる支援者の方々とお話できることは私にとっても非常に勉強になりました。
貴重な機会をありがとうございます。
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