任意後見契約・任意後見人の使い方と手続きの流れ

任意後見契約って?

簡潔に言うと、「当事者の意思のもと」財産の管理や難しい契約を代わりにしてくれる人を選ぶ契約というようなものです。

 

まずもととなる成年後見制度についてですが、詳細についてはこちらの記事をご参照ください。

成年後見制度をわかりやすく解説!

 

成年後見人制度とは、判断能力が不十分な方の代わりに本人の財産を管理してくれたり、必要な契約を結んでくれる成年後見人を選任する制度のことです。

 

本人や親族の申し立てで、家庭裁判所が成年後見人を選任します。

 

成年後見人制度の大きな難点としては

「後見人が誰になるかは裁判所が選ぶため、本当に信頼できる方が後見人になってもらえるかどうかわからない」という点があります。

 

これは成年後見制度を利用しようとする多くの方が思い悩むことで、成年後見人と親族との間のトラブルや、対応の悪い成年後見人の話を聞いて、どうしても成年後見人制度を使いたくないという方のお話をよく耳にします。

 

家庭裁判所が選びたがる司法書士・弁護士等の専門職後見人の横領事件が後を絶たないことも、市民が成年後見人制度の利用に消極的になってしまう理由のひとつなのでしょう。

 

まとめると成年後見制度の大きな難点である「成年後見人を本人や親族の意思で選べない

ということに備えられるようにできた契約がこの任意後見契約です。

簡単に言うと、自身の意思能力が衰える前に、契約によって誰を後見人にするのか決めておく契約

この任意後見契約は後見人を自分の意思で契約によって決めることができます、

 

「特定の信頼できる誰かに後見人になってもらいたい」

後見人の報酬について、裁判所に決められた額でなく自身の意思できちんと決めたい

自分の財産の内容をよく知らない人には見られたくない

 

任意後見契約はこういった方に適した契約手段です。

 

任意後見契約・任意後見人手続きの流れ

まず条件として、この任意後見契約も契約であるため、本人の意思能力が必要になります。

この任意後見契約もひとつの契約であるため、任意後見契約を結ぶためにもやはり契約のための十分な判断能力が必要なのです。

ご高齢の方が自身の認知症対策の中で使う場合の任意後見契約も、認知症が進行してしまい、契約を行うだけの判断能力がなければ契約を締結することができません

よって、重い知的障害や精神障害をあって意思能力が不十分な場合はこの契約を締結することができません

反面、精神障害などで、「時々」意思能力が不十分になってしまう場合などであれば、意思能力が認められるタイミングで契約を結ぶことができます。

この任意後見契約の締結は公証役場というところで、公証人の立会のもと行う必要があります。公証役場に事前に文案を提出し、日程等の打ち合わせをする必要があるので、基本的には専門家に依頼して進めることになるでしょう。

任意後見監督人って?

契約の締結後は、本人の意思能力が不十分になった時点で、後見開始の手続きを行います。この手続きについても公証役場を通じて行います。任意後見業務を開始する際には、「任意後見監督人」を家庭裁判所で選任してもらいます。

任意後見監督人とは、裁判所で選任される監督人で、任意後見人の業務を監督する者のこと。主に弁護士・司法書士などの専門職が行う場合が多いです。

報酬もかかり、本人の財産から支出することになります。

家庭裁判所の示す報酬の目安としては、成年後見人がついた場合の半額程度で、月1万円~となっています

任意後見人とは違い、任意後見人監督には本人が選ぶことができません。

 

※任意後見監督人の選任から任意後見が始まるので、任意後見契約の直後に財産管理がはじまるわけではありません。ただし、別途財産の管理を委託する契約を締結することもできますので、すぐに財産の管理が必要であれば財産管理委任契約も一緒に結びましょう。

 

任意後見人の費用について

任意後見人の報酬についてですが、成年後見人が月額2万円~(財産額に応じて増額)となっているところ、任意後見人の報酬は、任意後見契約の中で自由に決めることができます。と、いっても後見人の業務自体もそれなりに負担のあるものなので、親族が任意後見人となるときもある程度の報酬はあっても良いのかもしれません。最終的には当事者間の裁量で決まることでしょう。相場としては、月額5000円~30000円の間で締結することが多いように思います。

任意後見監督人については、裁判所で選任されるので、報酬を契約で定めることはできませんが、月額1万円~(財産額に応じて増額)と裁判所で示しています。

 

障害者の親なきあと問題で利用されるケース

1 障害者の両親が認知症対策のため利用するケース

障害者の親なきあと問題において、検討しなければならないのは両親の認知症等です。

「親なきあと問題」の表記が「親亡きあと問題」ではない理由としては、親亡くなった場合だけではなく、認知症等で介護ができなくなってしまった場合も含めて問題になり得ることから、「親なきあと」の記載となっているとのことです。

障害者の親なきあと問題における両親の認知症対策において効力を発揮するのがこの任意後見契約です。

両親の認知症が進行していった場合、両親が自身で自分の財産を管理・処分できなくなってしまう場合があります。そうなると障害のある子と両親が生計をともにしていた場合、一緒に生活が立ち行かなくなってしまうこともあり、両親についても成年後見制度を利用せざるを得ないといった可能性も出てきます

 

また、両親のいずれかが亡くなった場合に、財産の凍結を解除するための遺産分割協議をする際も、認知症で遺産分割協議が整わないという心配もなく、任意後見人が遺産分割協議を代理してくれます。

もっとも、認知症対策のために両親が任意後見契約を公証役場で締結するというような場合は、公正証書遺言も一緒につくることがほとんどかと思われますので、遺産分割協議への対策を考える必要性はあまりないかもしれません。

やはり、日常生活に必要な財産の管理・処分を両親ができなくなったことに備えるのが、この任意後見契約の役割と言えるでしょう

 

2 障害者本人が利用するケース

上記のとおり、精神障害を持つ方が、元気なうちに自身の後見人を選任する場合があります。当相談室にて対応したのが、本人の状態が良くないときに本人が家を出てしまい、戻ってきたころには財産のほとんどを使い切ってしまうという方のご家族からのご相談でした。

そういった場合には、元気なときに任意後見契約・財産管理委任契約を締結し、ふとした衝動によって浪費をしないようにするという対策が可能です。

また、障害のある子供が未成年のうちであれば、親権に基づいて両親が子供のための任意後見契約を締結することも可能です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

親権者による未成年障害者の任意後見契約について

こちらの記事の中にもあるのですが、どうしても子供のうちに適格な任意後見受任者を探すことが難しく、とくに家族の中のきょうだいしか任意後見受任者になり得る者がいないということが多いです。

逆に信頼できる法人・専門家・親族がいれば早めに任意後見契約を結んでおくと良いでしょう。

 

今後の展望

ここまでのお話のとおり、任意後見契約そのものは有用に働く可能性のある制度なのですが、現実的には信頼して依頼できる任意後見人の数が少ない現状にあります。

当相談室の司法書士・社会福祉士も任意後見人を受任してはいるのですが、地域や本人の事情を考えると当相談室で対応し切れない場合もあります。

そこで当相談室では、ご家族内での任意後見契約の締結を推進しながら、任意後見人のお仕事をいろいろな方に行ってもらえるように広めています。

もちろん、後見業務には高い専門性が必要になってくるので、誰もが簡単になれるという訳ではないのですが、現在後見人のなり手が不足しているということもあり、任意後見人の需要は高まってきています。

また、入所施設、グループホームや就労支援施設の運営法人または職員が後見人を兼ねることで、より生活に寄り添った形で後見業務を行える可能性も出てきます。

実際に利用者と任意後見契約を締結したいという法人からのご相談も多くあり、今後は介護と財産管理を一元化できる仕組みが増えていくのかもしれません。

 

当相談室では、任意後見契約の締結・利用、任意後見受任者からの相談、公正証書での作成に関するご相談を承っております。

お気軽に親なきあと相談室ファミリアにお問い合わせください。

 

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